新恐竜秘宝館

Vol.75 恐竜プラモデル史11

前回の予告どおり、今年の夏、何故か活況を呈した恐竜プラモデルの特集です。旧恐竜秘宝館最終回の「恐竜プラモデル史10」から実に13年半の時を経ての続編になります。

 

実のところ、1993年のタミヤの「1/35恐竜世界シリーズ」以来約4半世紀の間に発売された日本製の恐竜プラモデルは、1997年にハセガワから発売された「ジュラシック・パークⅡ」の関連商品(秘宝館vol.65)のみでした。

海外事情も同様で、ジュラシック・パークⅡの時は老舗メーカー、レベルからティラノとヴェロキがリリースされましたが、その後は2000年に往年のプラモメーカー「オーロラ」のブランド名を復活させたメーカーから、旧オーロラテイストに溢れた3種の恐竜プラモが発売された位です。

 

*ここで言うプラモデルとは、パーツがランナーに繋がっているインジェクションキットの事で、レジンやソフビのキットは含まれません。ちなみに学研から2005年~2007年にかけて発売された「1/35恐竜骨格モデルシリーズ」のティラノ(これのみ科学雑誌の付録)、トリケラ、ディプロドクスは荒木さんの原型でとても良い物でしたが、材質がポリエチレン(プラモ塗料が使えない!)なのでプラモデルと呼ぶには微妙な物でした。しかもISBNコード付きで書籍として書店で販売されていたのです。

 

恐竜プラモが再び日本のプラモシーンに登場したのは2018年の事。フジミ模型の「自由研究シリーズ」にティラノ、トリケラ、ヴェロキがラインナップされたのです。皮膚のモールドも良く関節が可動し、色を塗らなくても成型色とシールでそれらしくなるという、現在進行中のバンダイ、プラノサウルスシリーズの先駆けの様なスグレモノでしたが、私的には残念なディフォルメ恐竜でした。その後2020年小学館刊の小学8年生、小学一年生の10月号にバンダイ製のティラノとトリケラの骨格プラモが付録として付き(新秘宝館Vol.56)、この辺りからあのガンプラのバンダイ(いつの間にか社名がバンダイ・スピリッツになっていますが、ここではバンダイで通させていただきます。)が恐竜プラモに力を入れるようになったのです。

 

2021年からは本格的骨格プラモ、イマジナリー・スケルトン・シリーズを展開。今年1月には手軽に組み立てて関節可動で遊べるうえ、骨格と生体の両方を楽しめるというお得なプラノサウルス・シリーズが始まりました。両シリーズとも継続中です。

 

*バンダイは去年あたりからプラモデル啓蒙番組をTVでオンエアしました。プラモに目覚めた主人公の女子が毎週ひとつプラモを作るビジネス系ドラマ「量産型リコ」シリーズと、アイドルたちが町のプラモデル屋さんを巡るという実に嬉しい番組「プラモに召されて」です。(悲しいことに私の地元では、このような街の模型屋さんは絶滅してしまいました。)

どちらの画面にも、さりげなくイマジナリースケルトン・シリーズのティラノが登場していました。

 

そんな中、この夏にかけて恐竜プラモ界に激震が走りました。あの数多くの恐竜模型を世に送り出した海洋堂。JP恐竜や、この新秘宝館でも紹介した「恐竜100万年」に登場のアロサウルスやラクウェル・ウェルチなどハイグレードな完成品を販売しているエクスプラス。SFメカから戦艦三笠、さらには模型材料まで手掛ける、ホビーショップには無くてはならない模型メーカー、ウェーブの3社が恐竜プラモ界に参戦したのです。

 

そんな降ってわいたような恐竜プラモブームを後押しするようにこの7月、雑誌「ホビージャパン・エクストラ」が恐竜プラモ特集号を出しました。内容はこれら恐竜プラモを使ったジオラマ制作記事やキットの紹介に加え、各地の博物館リポートから恐竜映画紹介まで至れり尽くせりでした。最も私が期待したディープな情報(例えば幻の恐竜キットとか)は得られませんでしたが。

ジオラマはどれも力作ぞろいでしたが、ブラキオサウルスとヴェロキラプトルが一堂に会していたり、フタバスズキリュウが上半身を海面から直立させていたりと、恐竜的にはオヤ?と思う作品もありました。

 

という訳で、今回は、前回のバンダイのモササウルス骨格に引き続き、この夏に発売された恐竜プラモを作り倒します。その前に、旧秘宝館「恐竜プラモデル史10」の最後で予告し果たせなかった、タミヤ「1/35恐竜世界シリーズ」を紹介しなければなりません。

画像1

*写真は当時撮った物なので画質の悪さはご容赦下さい。

 

このシリーズには「カスモサウルス情景セット」「ティラノサウルス情景セット」「パラサウロロフス情景セット」「トリケラトプス情景セット」「ベロキラプトル6体セット」「ブラキオサウルス情景セット」「小型恐竜セット」の7種がありますが、この写真ではそれらの恐竜をランダムに並べています。中央の写真はオーロラ式に連結できる、ブラキオを除くベースをつなげた物。こうしてみるととても充実しています。ブラキオ以外は白亜紀の恐竜。こうなったらブラキオのベースに連結できるジュラ紀恐竜情景シリーズを再開して欲しい…タミヤが無理なら他のメーカーが引き継がないだろうかなどと妄想してしまいます。

 

その後の恐竜プラモの画像も紹介しておきましょう。

 

画像2

画像2は復活オーロラのティラノ、プテラノ、トリケラ。それぞれ秘宝館Vol.57新秘宝館Vol.57新秘宝館Vol.59で紹介済みです。オーロラのイメージがこれでもかと誇張されていますが、実はオーロラのプレヒストリック・シーン・シリーズはけっこうリアルな造形なのです。(秘宝館Vol.57

学研の「1/35恐竜骨格シリーズ」は前述の様に厳密にはプラモデルとは言えないかもしれませんが、このプラモデル史に加えたいと思います。というのも、これらのキットは秘宝館Vol.60で名作プラモデルとして紹介した70年代の恐竜骨格モデルシリーズを受け継ぐものだからです。ティラノは2006年刊行の雑誌「科学のタマゴ8号」の付録。トリケラとディプロドクスは2006年と2007年にGakken Mook「恐竜骨格モデルシリーズ」として発売されました。ディプロドクスなど全長90cmもあります。いずれも原型は荒木一成さんによるもの。

*ティラノとトリケラは2021年に「科学と学習PRESENTS」として再版されました。

 

 画像3

2018年のフジミ模型の「自由研究シリーズ」のディフォルメ恐竜。左のティラノは私が組んだもので、色を塗る気になれず素組み状態ですが、その横のJP色のティラノ、ヴェロキはヤフオクで見つけ購入した物。こうして紹介するのにちゃんとした作品があって良かった。やはりプラモは塗装してナンボですね。このシリーズにはもう一体トリケラがあるのですが、箱の中に手つかずで眠っています。

 

画像4

新秘宝館Vol.56に登場した、2020年刊の小学館の雑誌「小学8年生」と「小学一年生」の付録。その後バンダイから製品化されました。2021年の恐竜くんの「恐竜科学博」では「会場限定バージョン」が売っていて、限定物に弱い私は散々悩んだ末かろうじて思いとどまった記憶があります。

 

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(バンダイ、「イマジナリースケルトン」シリーズのティラノ(2021)VSトリケラ(2022)。実はティラノはあのウサギ跳びスタイルに抵抗があって(8トンにもなる成体のティラノを跳ばすのは無理があるし、何よりカッコ悪い!)ずっと作らずにいたのですが、ヤフオクで関節にジョイントを埋め込んで可動させるという驚くべき改造が施された作品を発見、1万円ほど(手間暇を考えると実に安い!)で手に入れました。もっと化石風に彩色したかったのですが関節を壊すのが怖くてやめました。トリケラは今回私が制作した物で、色あいをなるべくティラノに合わせたつもりだったのですが、写真にすると若干違和感が…。

 

さていよいよこの今年の新顔の登場です。奇しくもどれも1/35スケールです。

 

画像6

まずは春先に発売されたウェーブの1/35「フタバスズキリュウ」。実にシンプルなモデルでパーツ数も少なく合いも良いので簡単に組めます。ポーズもいさぎよく科博の展示そのまま。(オプションで別の首パーツが付いてはいますが)まさに科博日本館版フタバサウルスの1/35スケールモデルなのです。

*ちなみに地元「いわき市石炭化石館ほるる(いつの間にか名称が変わっている)」のフタバスズキリュウは首をまっすぐ伸ばしています。

 

意外なことにこの科博ポーズのフタバスズキリュウの模型は今回本邦初登場なのです。科博で売られている海洋堂製のガチャ「カプセルミュージアム」の2種(骨格と生体)でさえ、首の曲げ方や鰭の向きなどに原型師の主張が盛り込まれています。このウェーブのキットの原型は徳川広和さん。おそらくメーカーの意向もあったのでしょう。科博の骨格に見事に肉付けしています。さすがプロのお仕事という感じです。

その徳川さんも30年ほど前「えんどるふぃん」からリリースされたレジンキットのフタバスズキリュウではしっかり自己主張しています(写真左)。

 

画像7

エクスプラスのTレックス。ジュラシック・パークの名シーンを再現した物です。こちらは恐竜プラモとしては異常なほどのパーツの多さですが、組み立ては比較的楽です。ただこのパーツの分割が模型的にどういう意味があるのかは疑問が残ります。先述の「ホビージャパン・エクストラ」の制作記事でもそのことには触れていませんでした。

 

劇中では夜間の雨の中のシーンなので、その感じを少しでも出せたらと思い、彩色を暗めにしたり恐竜の皮膚を濡らしたり道路に打ち付ける雨粒を表現しようとしてみたりしたのですが、思う様にはいきませんでした。でもなかなか楽しい作業でした。

 

一つ疑問なのが道路にしっかりとティラノの足跡が刻まれている事。舗装されている筈では?

 

*エクスプラスからは12月にJPⅢのスピノサウルスのプラモも発売されるそうです。

 

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海洋堂のティラノサウルスと生命の樹。

ティラノの方は本来は研究員や飼育員がセットになっている「ディノサン」的な世界観の

キットなのですが、人類を塗る気になれなかったのでティラノ親子だけでジオラマにしました。ベースは部屋に隅に眠っていたガンダム情景模型シリーズの「テキサスの攻防」。発売当時、ジオラマベースに使おうと思って購入した物です。モビルスーツもちゃんと作った記憶があります。懐かしい…。植物も恐竜ジオラマを作っていた時(秘宝館Vol.15)のストックです。

 

さて問題の太陽の塔の生命の樹。これはなかなかの難物でした。ハズキルーペでも追いつかない位細かい塗り分けが必要で、おまけに色もよく判らない。設計図(今では死語の様ですが)に細かく色の調合まで指定されているのですが、そんなに大量な塗料を買い揃えるわけにもいかず、カラー図面もいまひとつ判りにくいので、「太陽の塔ガイド」(小学館1018)と言う本の展示生物解説の写真を参考にしました。ただ塔内の生命の樹の写真は照明が派手過ぎて実際の色は推測するしかありません。何とか出来上がったものの力尽きました。太陽の塔本体に取り掛かかれるはいつの事やら…

 

最後に10月末に出たばかりのバンダイのプラノサウルス・シリーズ最新作、アンキロサウルスのご紹介です。

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生体の方はなかなか良い感じなので色付けしました。と言ってもドライブラシと墨入れ位ですが。

同じポーズで並んでいるのはこれも最新のPNSOの完成品、ズールです。勿論ポーズをとっているのはプラノの方ですが。

 

アンキロ類の模型とくればVol.72鎧竜特集の時にご教授願ったASAさんの評価が気になるところです。

 

ズール関してはツッコミどころが無いと絶賛していました。

アンキロは胴体の幅や体鎧の帯列の数など、気になった所はありますが、

ポーズを変えて遊ぶ分には、鎧のおかげで関節部の隙間も気にならないので楽しく遊べます。ASAさんもその辺りは評価していて、充分買う価値があるとおっしゃって既に初日に3個買って、内一つは粘土を盛って納得いく姿に改造中だそうです。さすがASAさんです。

 

さて今年もこの回で最後になりました。

1年刊ご愛読ありがとうございました。

来年もよろしくお願いいたします。

 

今年のクリスマスカードにしたのは、サンタクロースと同じく北極圏に棲息するティラノサウルス科の恐竜、ナヌークサウルスを描いた日本画です。11月半ばに池袋で開催された、第5回「日本画と恐竜」展で購入した、横橋成子さんの作品。クリスマスにぴったりだと思いませんか?写真では判りませんが実物はキラキラしていてさらにメリークリスマス!です。

 

では良いお年を…。


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田村 博 Hiroshi Tamura

ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。