Vol.11

ハロルド・スミスに何がおこったか

1999年 / 英
原題:Whatever happend to HAROLD SMITH ?
監督:ピーター・ヒューイット
脚本:ベン・スタイナー
キャスト:トム・コートネイ / マイケル・レジー / ローラ・フレイザー /
     ユリ・ゲラー(特別出演)

舞台は1977年のイギリス。18歳のヴィンス(マイケル・レジー)の父親ハロルド・スミス(トム・コートネイ)の超能力をめぐり展開する青春コメディーである。
「サタデー・ナイト・フィーバー」のジョン・トラボルタに夢中のヴィンスは、ある日パンクのコスプレでストレスを解消している少女ジョアンナ(ローラ・フレイザー)に魅せられ、即座にパンクに転身。
「チャーリーズ・エンジェル」をこよなく愛するハロルド・スミスは、老人ホームで超能力を披露。腕時計を止めるはずがペースメーカーまで止まってしまって殺人罪に問われ、一躍有名人となる。
果たして、ハロルド・スミスの超能力は本物か……。本物ならば有罪である。
彼の超能力を科学的に検証し真実だと証明しようとする科学者と嘘っぱちだから無罪を主張する弁護士が出演するテレビ番組が組まれ、カメラはスミス一家の自宅にまで突入レポートを企て大騒ぎに発展する。勿論、生中継だ。
レポーターはカメラの前でガラスの容器に入った金属棒を曲げるようにリクエスト。イギリス中が注目する中、沈黙の後「できない…」、ハロルド・スミスは答えてしまったものだから、番組は滅茶苦茶。収拾がつかなくなる。
スタジオの端に立てかけてあった海生爬虫類の写真がテレビに映し出される。
多分プレシオサウルスだろう……。

超常現象や謎を検証する人気テレビ番組が70年代のイギリスで放送されていて、映画にその設定をそのまま取り込んだのだ。
1823年最初の完全なクビナガ竜の骨格の発見、世界初のプロ化石ハンターとなったメアリー・アニングの国である。
そして、1933年6月9日、イギリス・スコットランドのネス湖の巨大生物が新聞報道されたり、海生爬虫類にはきっと特別な思い入れがイギリスにはあるのかもしれない。

ハロルド・スミスの超能力が問題になっていた丁度その頃、世界では世紀の大発見と、恐竜マニア、生物学者を騒がせた一つの事件が確かにあった。
1977年4月25日ニュージーランド沖で日本のトロール漁船がプレシオサウルスかも知れない生物の死骸を引き上げたのだ。
腐敗が進んで悪臭がひどかったため、数枚の写真と体の一部を残し海に捨てられたのだが、共同通信社を通じて世界中に報道されることになった。
ビージーズ「恋のナイト・フィーヴァー」、セックスピストルズ「アナーキー・イン・ザ・U.K.」、ディスコ……、スプーン曲げの超能力を披露するユリ・ゲラーも特別出演し70年代風俗が描かれているこの映画のことだから、プレシオサウルスかウバザメか……、海生爬虫類を世に送り出した国として描いておきたかったに違いない。
本当はハロルド・スミスは病も治療できるほどの超能力者だったのだが、テレビ番組で真実を明かさなかった故、平穏で幸せな余生を過ごすことができた。プレシオサウルスもまた……、その存在を信じるイギリスなのである。