Vol.95

世界の中心で、愛をさけぶ

2004年 / 日本
原題:世界の中心で、愛をさけぶ
監督: 行定 勲
原作:片山恭一
脚本:坂元裕二 / 伊藤ちひろ / 行定 勲
キャスト:大沢たかお / 柴咲コウ / 長澤まさみ /
     森山未來 / 山崎 努 / 他

小説『世界の中心で、愛をさけぶ』(片山恭一著)の映画版。社会現象を引き起こした話題作である。
サク(高校時代の朔太郎:森山未來)とアキ(長澤まさみ)の二人が夢島で一夜を過ごす場面がある。古いカメラをアキがカウンターの下から発見した廃屋だ。
夜……お互いの名前について語り合う。
アキは、「アキのアキは白亜紀の亜紀」だという。亜紀の父親が、地質時代のなかでも白亜紀は新しい動物や植物が栄えた時代。恐竜やシダ植物のように栄えますようにと願いを込めた名だと説明する。
亜紀は「ねぇ、サク。どうしてあなたは朔太郎なの?」と問う。
「親父が萩原朔太郎が好きだから……」

恐竜は、朔太郎の部屋の窓辺でも登場する。
「あんなひどい嘘をついて手に入れたウォークマンで聞いてください。あのね、サク……」
亜紀の台詞が流れる朔太郎の背後に、アクロカントサウルスのフィギュアが映る。二度目は、朔太郎が初めて亜紀にテープを録音するシーンだ。
アクロカントサウルスは白亜紀前期に生息していた大型獣脚類である。

ちなみに、フェバリットのサイトで「恐竜秘宝館」を連載中の田村博さんに「世界の中心で、愛をさけぶ」に恐竜らしきフィギュアが映っているが」と問い合わせたところ、次のようなコメントをいただいた。
「恐ろしくバランスが悪いですが、ディテールはなかなか良さそうですね。材質は何なんでしょう?市販されていた物かどうかも判りません。種類は今だったらアクロカントサウルスでしょう。アクロカントサウルスが一般の本に登場しだしたのは多分80年代のはじめで、当時はスピノサウルス科とされていました。」

松本朔太郎は何故、「世界の中心で、愛をさけぶ」必要があったのだろう。

萩原朔太郎は大正6年、詩集「月に吠える」を出版する。
「世界の中心で、愛をさけぶ」……似ていなくもない。

詩集の序文の中に次のような言葉がある。
「人は一人一人では、いつも永久に、永久に恐ろしい孤独である。
原始以来、神は幾億万人といふ人間を造つた。けれども全く同じ顔の人間を、決して二人とは造りはしなかつた。人はだれでも単位で生れて、永久に単位で死ななければならない。」

松本朔太郎は、亜紀が地球の中心だと言った場所で、「単位で生れて、永久に単位で死ななければならない」ことを確かめなければならなかったのかもしれない。

「月に吠える犬は、自分の影に怪しみ恐れて吠えるのである。」