エッセイ

第81回 首が長いステゴサウルス

ご愛読いただいた恐竜最新ニュースですが、今回でしばらくお休みします。なにとぞ、ご了解ください。

今回は、ステゴサウルスの話です。ステゴサウルスといえば、前足が後ろ足より短くてその動きは遅く、また、頭は低い位置にあって、地面付近の植物を食べていたというイメージがあります。
最近、首の長いステゴサウルス類の化石が発見されました。首の骨(頚椎)が普通の竜脚類より多いのです。


"すばらしい地球の神"

化石は、ポルトガルにあるジュラ紀後期(およそ1億5000万年前)の地層で発見されました。この時代は、ジュラ紀中期に現れたステゴサウルス類が最も繁栄した時代で、白亜紀になると衰退していきます。
体の前半部分と、頭部の一部も見つかっており、ヨーロッパのステゴサウルス類として頭部が残された初めての種とされています。その頭部(吻部)は細長く、ステゴサウルスらしい顔つきですね。

学名は、Miragaia longicollum (ミラガイア・ロンギコラム)です。その属名は発見地にちなんでいますが、ラテン語で"すばらしい地球の神"もあります。また、種小名はラテン語で"長い首"の意味です。

系統的には、ステゴサウリア(Stegosauria)のステゴサウリダエ(Stegosauridae、科)の新しく提唱されたクレード(単系統のグループ)、ダーセントルリナエ(Dacentrurinae、亜科)に位置づけられ、Dacentrurus armatus (ダーセントルーラス・アルマタス)の姉妹群とされています。
ダーセントルーラスは、1875年にオーウェンによって記載された最初のステゴサウルス類です。かつて基盤的ステゴサウルスとされていましたが、より進化したタイプとされています。


首の骨は17個以上

図で白い部分が発見されている部分です。体の前半部分の化石がほとんど見つかっています。
ステゴサウルスらしく、前足はがっしりしています。
頚椎は15個で、第1第2頚椎である環椎と軸椎が見つかっていないため、頚椎の数は少なくとも17個となるわけです。

ミラガイアの頚椎数は、マメンチサウルスやオメイサウルスなどと同じで、ジュラ紀後期の竜脚類の頚椎は12〜15個ですから、同時期の普通の竜脚類よりも多いことになります。

ステゴサウルス類の頚椎としては、Stegosaurus mjosi は13個、Stegosaurus armatus は12〜13個とされています。 普通のステゴサウルスの首の長さは1メートル程度ですが、ミラガイアの首の長さは1.8メートルほどで、頭部を入れると2メートルを超えます。体の前半部分しか見つかっていないのですが、推定体長は6メートルとされていることからすると、3分の1が首といったところでしょう。
もっとも、"竜脚類のような"と表現されるミラガイアですが、頚椎数が同じマメンチサウルスほど首が長いというわけではありません。


首を長くする仕組み

首を長くする仕組みとして3つ考えられています。それは、1)胴椎が頚椎になること、2)新しく頚椎の数が増えること、3)頚椎自身の長さが長くなること、です。

ステゴサウルスの場合、基盤的なグループのHuayangosaurus(フアンヤンゴサウルス)の胴椎は16個で、首が長く進化するにつれてその数は減っており、Stegosaurus mjosi では13個です。ミラガイアの胴椎は見つかっていませんが、ステゴサウルス類フ首が長く進化するという点で、胴椎の頚椎化は重要な要因とされています。一方、頚椎の数が増えることや頚椎自身の長さが長くなることの寄与は少なかったようです。


首が長くなったわけ

首が長くなった理由としては、2つの仮説が示されています。

そのひとつは、比較的高い位置にある植物を食べることができたということです。ほとんどのステゴサウルス類は前足が後足より短く、低い位置にある植物の葉や芽を食べていたと考えられています。しかも細長い口先からすると、植物を選んで食べていたようです。
また、ステゴサウルスは重心が後ろ足にあり、時には後ろ足だけで立ち上がったとされています。ミラガイアの後ろ足は見つかっていませんが、他のステゴサウルスや植物食恐竜との競合を避け、長い首でより高い位置の植物を食べようとしたのかもしれません。

もうひとつは性選択です。背中のプレートだけでは目立たなくなったため、首も長くしたというところでしょうか。



参考: A new long-necked‘sauropod-mimic’stegosaur and the evolution of the plated dinosaurs
Octavio Mateus, Susannah C.R Maidment and Nicolai A Christiansen
Proc. R. Soc. B published online before print February 25, 2009

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