エッセイ

Vol.60 恐竜プラモデル史 5

前回書いたように、1978年は恐竜プラモ豊作の年で、これは同年7月から大阪エキスポランドで開催された「大恐竜展」と関連がありそうです。この展示会はソ連科学アカデミーのコレクションから、タルボサウルス、サウロロフスといった大型恐竜の全身骨格や多数の獣形類、毛の痕跡で有名な翼竜ソルデスなどを集めた日本初の本格的恐竜展だったのです。翌年の2月からは上野の科博に場所を移して5月まで催されていました。その間、ちょっとした恐竜ブームだったようで、78年2月に日本テレビ「すばらしい世界旅行」で5週に亘って「恐竜王国」と題した特集を放送、7月には文芸春秋デラックスの特集号「恐竜2億年」が刊行されのをはじめ、「科学朝日」「少年マガジン」「少年ジャンプ」などで恐竜特集が組まれています。

そんな78年の1月に、出版社「学研(学習研究社)」から、これまでの玩具的な物とは一線を画す、本格的恐竜プラモが発売されました。「恐竜骨格モデル」シリーズです(写真1,2,3,4)。


写真 1

写真 2

写真 3

写真 4

材質が柔らかく、塗料が定着しにくい(ステゴサウルスは塗装してありますが、強く触ると剥がれてしまいます。)という困った点はさておき、現在の眼で見ても充分鑑賞に堪える出来で、これでたったの400円!。実はこのシリーズ、元々は雑誌「5年の科学」「6年の科学」の付録教材だった物で、その後も現在に至るまで何度か付録になっています。最初に登場した年はわかりませんが1976年にはステゴサウルスが存在していましたし(写真5 ヤフオク画像)、新しい所では2007年2月号の「5年の科学」に、やはりステゴサウルスが付いています。


写真 5

感心な事に今風にリニューアルされ、尻尾を持ち上げスパイクは水平になっています(写真6)。付録ではもう1種類、ブラキオサウルスがあるのですが(写真7)、何故か単体では市販されていません。我家には88年版(写真8)が有り、これは私の部屋がかの恐竜専門誌「恐竜学最前線」(学研)の取材を受けた際、故井上編集長からお土産として頂いた家宝です。写真9は、以前ヤフオクで手に入れそこなった80年版。学研は2006年にも荒木一成さん原型による3種の1/35恐竜骨格モデルを発売しています。


写真 6

写真 7

写真 8

写真 9

そして1981年。この年は中国の恐竜展が開催され、マメンチサウルスなどが初お目見えしました。そんな中、タミヤから1/35恐竜シリーズがリリースされました。当時のタミヤはミリタリー物のスケールモデル等で、他のメーカーの追従を許さないほどの正確・精密さを誇っていました。そのタミヤが統一スケールで出す恐竜ですから期待をするなと言うのが無理と言うもの。で、その結果が前回お見せしたティラノの足とは!
当時の私は、このティラノをストレートに組む気力が失せ、改造してしまったので、今回改めて手を加えず作ってみました(写真10)。いやはや…体表のモールドの雑さ、断面が丸い胴体、歯など、なんと一部前向きに反り返っています。おまけに解説書の記述も間違っていますし。これはもう無知な原型師が恐竜を軽く見て何のリサーチもせず作ったと言うのが明白。若き日の私がせめてもの抵抗で改造した水平姿勢も情けない結果に終わってしまい(写真11左)、元が悪いからと言い訳したいところですが、見事な大改造を施した写真11右を見ては沈黙するしかありません。これはあの頃行きつけの模型屋のショーウィンドウに飾ってあったのを譲ってもらった一品。パテを盛り、足、表面モールド、顔と殆んど原型を留めていません。作者は存じ上げませんが、いずれ凄腕のモデラーにして恐竜好きの方だったのでしょう。
写真12のステゴの箱を開けた第一印象は木彫りの熊。トリケラは中ではまともな方で、同年8月の「モデルアート」誌で取り上げられ、模型誌2度目の恐竜記事となりました。

タミヤは1993年から汚名返上の「恐竜世界シリーズ」を発売、現在に至っているのですが、どういう訳かこの旧恐竜シリーズも、昔のままのパッケージ(相違点はゴミの分別マークだけ)と解説書(せめてディプロドウスカヤ―ロシヤ産ディプロドクスか!?―は修正して欲しかった)で売られています。
…謎です。


写真 10

写真 11

写真 12
田村博氏

田村 博 Hiroshi Tamura

ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。

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